自由美術協会

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相互批評

的場脩二・坂内義之

坂内義之さんの作品について 的場脩二

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坂内義之:「視点」

坂内氏のアトリエと私の家とは車で7分ぐらいの近場にあります。

時々、坂内氏のアトリエを訪問するのですが、必ず絵の話や芸術論に花が咲きます。

いつも話されるのは、自分の絵に向かう姿勢・絵の制作についてで、常に120%で制作に向かわないと次が見えてこないよ……と。

確かに坂内氏の絵を拝見すると、言われた意味が伝わってきます。常に新しい絵作りに挑戦している意気込みが感じられます。

坂内氏の絵が変化してきたのは、3年くらい前からだと思います。以前の作品は、いろいろな形を画面に配置し、その上に形や線を重複させ、淡い色彩を何層にも塗り重ねることによって、自分を見つめ、内なるものを繊細に造形化していたと思います。

どの作品を見ても、軸がぶれない絵づくりをしていたと思います。

最近の作品は、以前の作品とは違って画面が力強く感じられます。

東紀州の災害の影響かどうかはわからないけれど洞察力が鋭くなり作品は重厚さが増してきていると思います。

熊野という地域性に密着した独自な発想に、いろいろな視点から内面を堀りおこそうとする姿勢が、計算された画面構成の中に感じられます。

一枚の作品を例にとると、形が画面の中に留まらず、画面の内外から全体を動かそうとしています。画面の中には「昆虫」「爬虫類」等の目を中心に重ねることによって奥行や色彩が変化し、また線によってさらに画面の広がりや重厚さが増し、坂内氏の意図する内面、「生」「死」「希望」等が深く感じられます。まさに坂内氏の世界感が表現されているのだと思います。

地域性に根ざした内面の独自な発想と、巾の広い創造力で、現実を深めながらすばらしい作品が生み出されていくことを期待します。

的場脩二さんの作品を見て坂内義之

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的場脩二:「生成」

的場脩二さんとはアトリエを訪ねあう仲で、一緒に酒を飲んでは深夜まで芸術について語り、熱き想いをぶつけ合う仲である。

2010年、彼は新人賞を受賞。自由美術会員となったころの作品は、イエローオーカーを中心に美しく強い色彩と細い線で小さな丸を構成し画面を作っていた。「私は超細密な絵を描くことは、なにも苦にはならない」と言って何時間も作品に打ち込んでいた記憶がある。

もっと脱皮したい。自分自身と葛藤し模索しながら、制作の方法や精神にもっと工夫が必要と、先輩の作家の作品や言葉を貪欲に吸収、新しい方向に踏み出し始めた。

当時の作品と今年の作品を見比べてみる機会があったが、地道に自分の方向性を切り開き、積み重ねてきた努力が存在感のある作品になっていて、5年間でずいぶん進化していると感じる。

今まで型を破るには大変なエネルギーが要ったことが想像できる。その困難な仕事をこの5年間続けてきた。これからも型を破り続けていくことと推察する。その仕事には豊かな発想力と斬新な表現が要求される。

彼の作品は、最初、内面のポエジーが明確なイメージで始まるのではなくて、何か漠然としたもので、中心に線、丸などを描きそこからイメージを増殖し発展させていく。それをフォルムに閉じ込めるのではなくて、もやもやしたままで視覚化しているのではないか。ねじれた色彩や奇妙な色彩感覚、美意識を先取りした現代美術といったところか?

的場脩二さんの絵画には、よく見ると、並々ならぬ考慮がはらわれていることが分かる。彼の色彩は何層にも重ねられて、視覚的好奇心にアピールすべく彩度の高い色と彩度の低い色をうまく調和させて強烈な画面を色彩に出している。何かを説明するのではなくて色彩自体が自由な生命をもっている。墨と混ぜた黒はお互いの色を微妙に交錯させて重厚さと深い輝きをたもち、広さよりも深さを求める制作姿勢には空間を掘り起こし画面から湧き出てきて、鑑賞する人を中へ引き入れていく力強さがある。必然的に真中からのフォルムのスタートになっている。又精細な表現で一点に視点を集中させる描写で、見るものすべてを一瞬にして納得させてしまう臨場感あふれる表現が、鑑賞する人にさまざまなイメージをかきたて想像させている。

さまざまな人間と接触し肌での体得が、頭で覚えるよりはるかに直接的と貪欲に吸収したことが、今までの型を破ることにつながった。今後も、従来の概念にとらわれず自由な考えで未知の領域に挑戦していってほしい。

遠いようで、近い死。生きることに向き合い、残された時間でどれだけ進化できるか、自在な表現を重視し、純粋な精神からすばらしい作品が生まれてくることを期待している。